世界で躍進を遂げる日本のCHAIとスペインのHINDSが奇跡のコラボレーションソングを発表!
コロナ禍に行われたHINDSの世界10箇所のレコードショップのSNSで行われたVirtual Instoreの会場にRough TradeやPocadilly、Banquet、Amoebaといったレコードショップと並び、日本から唯一選出されたFLAKE RECORDS主宰のレーベルFLAKE SOUNDS(奇しくもCHAIの過去2枚の7インチリリースも行なった)から限定500枚ピンククリア盤で7インチリリース!
artist / CHAI / HINDS
title / UNITED GIRLS ROCK ’N’ ROLL CLUB
発売日2020年8月21日(金)
7inch Pink Clear (Limited 500)(FLAKES-235) ¥1,500(税抜き)/¥1,650(税込)
Label / FLAKE SOUNDS
JAN 4571207712356
A-Side
UNITED GIRLS ROCK ’N’ ROLL CLUB
これは、CHAIとHINDSのコラボレーション・シングル『UNITED GIRLS ROCK’N’ROLL CLUB』に登場するクエスチョンだ。自分も過去に何度か口にしたことがある。すると、「あ~あ、またか」という顔をされることが少なくない。「めっちゃ楽しいからやってみて」と勧められたこともあったが、「男だけでやってるのと同じだって」と返されることのほうが多い気がする。それはこっちも重々承知の上。でもガールズバンド――いや、CHAIに倣って“オンナバンド”と呼ぶことにしよう――の数は増えているとはいえマイノリティであり、オトコバンドとは絶対に違う部分がある。なんだかんだ言って、腹立たしい話を色々と聞かされたものだ。取材を受けても、音楽じゃなくて見た目やファッションの話ばかりされる。「カレ氏いるの?」とか「楽器って自分で弾いてるわけ?」とか「自分で曲書いてるの?」なんて平気で訊ねられる。#MeToo運動が音楽界にも波及し、そういう差別や偏見の実情がどんどん明るみに出ていることはご存知の通りで、とうのHINDSも先頃発表したばかりの3rdアルバム『The Prettiest Curse』収録の『Just Like Kids(Miau)』で、不愉快な体験の数々を歌っていた。ヘタクソだとこき下ろされたり、「いい足してるから売れてるんだよ」と言われたり……。オトコバンドだったらまずない。しかも、HINDSとCHAIはアウトサイダーだ。マドリードと名古屋というインディロックの世界的中心地とは呼び難い町で誕生しながら、国境や言葉の壁をものともせず、本場英米のファンを魅了してしまった。音楽愛とメンバーの結束、そしてもちろん、抗しがたい魅力あふれる楽曲のパワーでもって。だからこそ、まさに女の子でバンドやるってどんな気分なのかを、シンプルなメロディと言葉に詰め込んだ『UNITED GIRLS ROCK’N’ROLL CLUB』の説得力は、半端じゃないのである。
実際、“Here”と“There”からやってきた2組には、音楽性こそ違うが、共通項がたくさんある。CHAI――カナ(ヴォーカル/ギター)、マナ(ヴォーカル/キーボード)、ユナ(ドラムス/コーラス)、ユウキ(ベース/コーラス)――は2012年に結成され、2枚のアルバムを発表済み。HINDS――カルロッタ・コシアルス、アナ・ガルシア・ペローテ(ヴォーカル/ギター)、アンバー・グリムベルゲン(ドラムス)、アディ・マーティン(ベース)――のほうはアナとカルロッタのデュオとして11年に始まっているから、活動時期はほぼ同じだ。共にツイン・ヴォーカルの4人組で、等身大の曲を書いて、プレイして、ノンネイティヴ・スピーカーとして英語でも歌って、果敢に国外に飛び出して、世界を旅して、DIYなやり方で評価と人気を確立してきた。
そんなわけで、遅かれ早かれ彼女たちがどこかで接触することは予期できたのだが、初めて対面したのは、18年のフジ・ロック・フェスティバルでのこと。パフォーマンスを終えたHINDSの楽屋を、以前からファンだったというCHAIが訪れ、後日対談が実現。すっかり意気投合し、その後ツアー日程が偶然重なってLAで再会した時にHINDSの面々が「何か一緒にやろうよ」と提案し、レーベルやスタッフの知らないところで勝手に話が進展する。そして、忙しいスケジュールにようやく隙間を見つけて、昨年11月、ヨーロッパ・ツアー中のCHAIと、『The Prettiest Curse』を録り終えてアメリカから帰郷したばかりのHINDSが、マドリードのスタジオで合流。レコーディングだけでなく、MVの撮影までほぼ1日で終えたという。
うまい具合に両者のスタイルが交差している曲は前もって共作し、CHAIが用意したベーシック・トラックをスタジオで肉付けして、その場で全員で歌詞を綴った。日本語、スペイン語、英語がランダムに入り混じっていて、誰がどこを歌っても違和感はないだろうし、いつ言語が切り替わったのか気付かないくらい。そんな自然なおしゃべりからは、全員が共有するバンド活動のモチベーション、ミュージシャンとしての野心と自信、オンナとしての怒りと反抗心が伝わってくる、ただ、「フェミニストですけど、なにか」みたいな肩に力が入ったところはなく、自分たちの行く手を阻むものをさらりとかわしつつ飄々と生き抜いてきた、彼女たちらしいレイドバック&オプティミスティックなノリだから、プロテスト・ソングというよりセレブレーション・ソング。オンナなら……いやオトコでも、きっとバンドやりたくなる。みんなユナイテッド・ガールズ・ロックンロール・クラブに入部したくなる。 ―― 新谷洋子